レオナルド・ダヴィンチの別の日のノートがあります。
【ダヴィンチNote2】
「色彩の遠近は何かの寸法に比例するものではない。
色彩は物体が隔たるほど大きさを失うように(①)、
それに応じてその本性を失う(②)ことに注意せよ」
①は、遠近法、透視図法、線遠近法と言われるものです。
②は、レオナルドが提唱した「スフマート技法」のことでしょう。
ぼかしのかかった色調で、顔や身体が、大気に包まれるような描写です。
輪郭線が消えて、やわらかい色彩のグラデーションで描かれます。
ダビンチの絵画から受ける「神秘な柔らかさ」は、この技法によるものでしょう。
実際に、私たちの顔には「輪郭線」が存在しません。
背景の木々にも「輪郭線」は存在しません。
すべての物には、光の当たる所と、影になるところがあり、その光の両面が作用しあって、物の形態となって認識しています。
その光と影の部分を、色彩のグラデーションで描写しています。
「聖アンナと聖母子」の、このスフマート技法をよく表しています。